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概要

senmuga

社長がゆく【株式会社杜の蔵】今回は福岡県久留米市の酒蔵株式会社杜の蔵(もりのくら)様にうかがい5代目当主である森永社長様にお話しをお聞きしてきました。杜の蔵様は日本酒、焼酎と両方を造っている酒蔵さんです。杜の蔵様の特徴といえば何が特徴でしょうか。はい。私どもは明治31年に創業いたしまして、私で5代目になります。地場にこだわった造りを目指して米は福岡産山田錦と福岡で産まれた夢一献という酒米を使っています。水は蔵の裏の高良山を水源とする伏流水を蔵内に井戸を掘りまして使用しています。ちょうど中軟水にあたりましてドライで辛いお酒造りには合わないのですが、柔らかく柔らかさの中に締りがあるお酒ができます。更に人についても30名程従業員がおりますが、全員地元の人間です。杜氏も地元でして、杜氏としてもう4代目になる者です。本当に地元に徹しているのですね。創業は日本酒創りからですか。いいえ、元々は私どもは農家でして、今でも久留米市には酒蔵が十七蔵あるのですが、昔はもっと多くありまして、酒蔵から出る酒粕を農家は肥料にしていたのですね。しかし、酒粕もそのままでは使えない。アルコールを飛ばさなければならない。そのアルコールを農家は焼酎として飲んでいた訳です。私どもそんな農家であったのですが、明治30年に勝手に酒を造ることができなくなって、造るのを止めるか、免許を取ってメーカーになるのかを選択した時に造る方を選んだわけです。ですので、焼酎造り、酒粕焼酎が始まりです。今は麦、米、蕎麦も造っておりますが酒粕に対する思い入れは強いですね。また、麦なのですが福岡県は大麦の生産でも全国2位の生産量がありますので、こちらも地元にこだわっています。最近取組んでいることがありまして、酒粕から焼酎を造った後の酒粕を田圃の肥料として戻してやる。そんな元来のサイクルに戻そうとしています。そういった地元への想いがあったからこそ、ここまで続けてこれたのだと思っています。また、私どもは小売の流通に強くなく、スーパーでの取り扱いがございません。飲食業での消費が殆どですので製品造りにも意識しております。さて柴田屋がこれから取り扱う「独楽蔵」のことをお聞きしたいのですが。こだわりや開発のご苦労などお聞かせいただけますか。独楽蔵は純米吟醸山田錦55%で造っております。開発は十数年前になりますが、日本酒が価値と価格の二つの流れになった時に、私どもは価格では勝負できない。ならば価値を追求しよう。そして今の食生活にマッチする日本酒、日本酒にもできるんだぞというところが見せたかったのです。実は伏線がありまして、先代のころに物置のような倉庫から50年前の純米酒が出てきまして、色は真っ黒だったのですが、飲んでみるとまだまだ飲める。そこで純米吟醸で熟成をかけるということを意識し出しました。〈株式会社杜の蔵〉代表取締役森永一弘福岡県久留米市三潴町(みづままち)玉満2773創業明治31年生活環境の変化にともなって今日の食生活も徐々に変わってきました。酒造りに携わる私たちはお酒の文化を守り続けるというだけでなく、磨きあげていく意識を持たなければなりません日本酒は本来温めて旨味の出るお酒だと思います。それが冷やして飲むという流れの中で造り自体も変わってきました。独楽蔵は温めて飲んで活きるお酒を目指しています。そうですね、ハマグリのお吸い物が冷えると僅かに苦味がでてきますね。日本酒ってそういうもののように思っています。ありがとうございました。地元への想い、酒造りの想いをとても感じました。蔵内に弓道場がありました。何でも2代目と3代目は弓道十段の達人だったそうです。食生活が昔とは大きく変わってきている中で、その食事に合う酒造りには酒屋としてお客様へのメッセージになると思いました。